これからを生きるために読みたい本 ちきりんと稲盛和夫の対照的な2冊
手元に、人の生き方について語った本が2冊ある。どちらの本も独特な生き方をしている著者が書いている。含蓄があり、なるほどと思わされるところが多い。
自分の頭で考えよう
1冊は、社会派ブロガーとして知られるChikirinさんの本。 月間200万のページビューを誇るちきりんさんのブログを読んだことがある人は多いと思う。覆面ブロガーながら影響力がある女性だ。
「自分の頭で考えよう」ダイヤモンド社刊 この本で説くところのひとつは、人は人生を『選択肢が少ないから迷うのではなく、判断基準が多すぎるから迷うのだ』。
文中ではそれを分かりやすく婚活女子に例えている。「せっぱつまった婚活女子は、顔も身長も収入も性格も家も財産も将来性もと多くの基準に固執しません。そんなことをしていたらおいしい餌はすぐに他の魚に奪われてしまいます」 なんかリアリスティックだね。
実際には、固執しない女子もいれば執着し続ける女子もいるんだけど、たしかに早くに結婚したぼくの友達はきちんと自分自身を見る力のある娘が多かった。
キャリアの一貫性なんてマジ無用
ちきりんさんの人生哲学を感じるブログ記事のひとつがこれ。キャリアの一貫性なんてマジ無用。
ちきりんさんがジャカルタで会ったある日本人女性は、大学でデザインを学び、卒業後はデザイン事務所に就職。しかし一年後はメーカーに勤め、以降はアウドドアグッズメーカー→バンコクの情報誌→バリ島の情報誌→ジャカルタで経理と、一貫性のない転職をしながらキャリアを積んでいった。 「『一貫したキャリアを積むべし』などという都市伝説に騙されないようにしましょう」とちきりんさんの人生哲学を体現している女性だ。バンコクの情報誌→バリ島の情報誌→ジャカルタで経理がキャリアといえるのか分からないが、何をしても生きていけるという程度の話として受けとめれば、なかなか有益かも。
ちきりんさんのブログは着目点が面白いけれども、出版した本はブログ記事をまとめたお手軽なものだから、1冊の本としてのまとまりに欠けている。前半と後半がバラバラな内容だと感じる
そんなお手軽出版でありながらもその本がヒットするところが、ちきりんさんらしいといえるかもしれない。
ちきりんさんとぼくとは、旅好きなところが似ていて、遠い遠い遠い親戚のようなものかな。お目にかかったこともありませんが。
人間として一番大切なこと
もう1冊は、稲盛和夫さんの「生き方」。 人間は何のために生きるのか という普遍的な問いかけに答えを出している。 稲盛さんは、京セラやKDDIを作り上げた人で、2012年には赤字企業JAL再建を果たした偉人。テレビや新聞にも頻繁に登場するから知っていると思う。
稲盛さんはまことに凄い人で、一介の技術者ながらなんとか経営していた倒産寸前の小さな会社を、巨大な京セラグループに作り上げてしまった。
どうやってそんなことをなし遂げたのか。その哲学をあえてとりあげれば「ひとつのことをなし遂げる大切さ」が説かれている。
若者だったころの稲盛さんが創業した京セラは業績不振にあえぐオンボロメーカーだった。優秀な人は早々とみきりをつけて辞めていった。残されたのは転職する才覚もキャリアもない愚鈍な者たちだけだった。しかしその者たちが、任された場所で懸命に働いているうちに、仕事を覚え、人を使うマネージメント力をつけ、やがては大会社となる京セラの重要な役職を担えるように育っていった。
他人から愚鈍と思われてもいい。あきらめず、粘り強く、ひとつのことを続けたらやがて大きな花が開くのだ。稲盛さんはそれを証明した。なんて凄いことなんだろう。人間の無限の可能性や発展性を感じる。
ちきりんさんなら傾いた会社に一番最初にみきりをつけて辞めるに違いない。
稲盛さんは65歳の時に京セラ・DDIの会長職を退き、京都の臨済宗の寺で出家得度した。人は何のために生きるか、人生をかけて知った答えはブッダが説いたことと同じだったという。しばらくは僧衣をまとっていて、このまま仏僧として生きるのかと思っていたら、いつまにか経済界に復帰してJALの再生に尽力されていた。
自分一人で生きているちきりんさんと、何十万・何百万人の人生を支えている稲盛さんの人生哲学はまったく逆の方向を向いている。これだけ立場が違えば人生哲学が違うのも無理からぬことだ。
人生において、稲盛さんは尊敬する人。ちきりんさんは近所の話のうまいおねえさんという印象かな。
ぼく自身は中途半端ながらも、ぼくなりに働くことに楽しさを見いだしている。そして、もっともっと人生の深さを識りたいと思って仕事をしている。
サンマーク出版
人は何のために生きるか、ここに答えがある。
たいへん素晴らしい本だからぜひ読んでください
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