その記事はフェイクだよ、これが本当のスティーブ ジョブズ最後の言葉
このところ、スティーブ ジョブズが人生の最後をむかえた時に病床で語った言葉がSNSでシェアされ、頻繁に目にする。
ここではその冒頭の部分を引用する。
私は、ビジネスの世界で、成功の頂点に君臨した。
他の人の目には、私の人生は、成功の典型的な縮図に見えるだろう。
しかし、仕事をのぞくと、喜びが少ない人生だった。人生の終わりには、富など、私が積み上げてきた人生の単なる事実でしかない。
世界最大のクールな企業Apple社を創業したジョブズは、死の床で何を理解したのだろうか。「喜びが少ない人生だった」に続く文はそれなりに感動的だ(紋切り型で新鮮さがない気がしなくもないが)から、多くの人がシェアするのももっともかもしれない。
続きを読みたい人は「私は、ビジネスの世界で、成功の頂点に君臨した。」で検索すればたくさんヒットするからどうぞ。
しかし残念ながらこの言葉はフェイクだ。
ジョブズ公認の伝記を読んでみよう
講談社からジョブズの伝記が出版されている。 「スティーブ・ジョブズ I・II、ウォルター アイザックソン著、 井口耕二訳」はジョブズ本人の依頼によって書かれた彼の公式伝記だ。最終章に、ジョブズがこの世を去るシーンが描かれている。
その最終章が講談社の好意でネット上に公開されている。誰でもダウンロードできるから読んでみよう。
せっかちな読者のために、肝心の臨終の部分を引用しておくね。場所はジョブズの自宅。 ベッドで寝ていて、妹や子供たちに囲まれてるところだ。
火曜日の昼下がり、ジョブズは、子どもたちの目ばかりを見つ めていた。そしてあるとき、パティに目をとめ、子どもたちをじっと見つめ、そしてローリーンに視線を移したあと、どこか遠くを見る目になった。
「うわぁ」
つぶやきが漏れる。
「うわぁ、うわぁ」
最後の言葉だった。
意識がなくなる。午後2時ごろのことだ。
スティーブジョブズは死の数時間前、意識がなくなる直前に「うわぁ、うわぁ」と言った。英語の原書にはこうある。OH WOW. OH WOW. OH WOW.
最後の言葉はこれだけだ。
SNSでシェアされている「最後の言葉」とぜんぜん違う。特に意味のあることを言っていない。そしてこれ以外のことも何も言っていない。もしかしたら、そこには凡人には分からない深遠な意味があるのかもしれない。が、意味があるのか、ないのか、はたまたそれ以外の何かなのか、それはその場にいた家族にもわからないのが真実だ。
SNSの感動シェアを読むのは飽きたな。実話ならいいけど創作じゃあねえ。
ネットに流れている嘘っこ最後の言葉は、ジョブズが語ったにしては表現が紋切り型すぎる。ジョブズはこんな通俗的な人生観を語ったりしない。生前のジョブズがどんなことを考えていたかは、講談社の伝記を読めば分かる。すでに多くの人が読んでいることと思う。まだ読んでいない人はぜひ手に取ってみてほしい。
最終章のみがネットで公開されているのは恐らく、もともと公式伝記はジョブズの生前に出版された本なので、最終章はジョブズの死後に発表されたからだろう。
ジョブズの伝記は100万部売れても赤字だった
余談だが、この講談社刊の伝記は単行本が1冊2000円で販売され、前後編合わせて100万部を売るベストセラーだったにも関わらず赤字だったそうだ。その理由は版権がべらぼうに高価だったこと。100万部を売ってももとがとれない版権料ってスゴすぎる。 さすがジョブズだ。
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