マイクロフォーサーズがプロカメラマンに選ばれる理由【最適なアスペクト比】
雑誌の取材撮影は、フットワーク重視であることが少なくない。電車を乗り継いだり、市場の混雑した通路を人を避けて歩いたり、雨の山歩きをしたり、そんなことが普通にあるだけに撮影機材の軽量化は重要項目だ。
プロ御用達の代表的レンズみたいに思われている 70-200/2.8のような重量級レンズは、移動が多い取材仕事ではまず持ち出さない。
一日歩いて一度も使わなかったら、1.5kgもある重りを持ち歩いているのと同じで、疲れるだけだから(30代の頃は70-200/2.8を持っているだけで嬉しかったから使わなくても持ち歩いていたけどね)。
取材撮影に適したマイクロフォーサーズ
最近はミラーレスカメラが軽量でよく写ると評判なこともあって、ぼくもマイクロフォーサーズのパナソニックGX7を昨年導入した。コンパクトながらキビキビと動作する、使いやすいカメラだ。 アスペクト比(縦横比)が4対3なのもプロの仕事向きだといえる。
アマチュア カメラマンは、アスペクト比といってもフルサイズ(およびAPS-C)の3:2しか知らない。だから3:2以外の画面に違和感をもつようだ。
対して経歴の長いプロはフィルム時代に4:5や6:7のほかいろんなアスペクト比のフォーマットを経験している。マイクロフォーサーズの4:3のアスペクト比は中型〜大型カメラに近くてプロ好みのフォーマットだ。
マイクロ4/3はセンサーサイズが小さいことがウィークポイントのように囁かれるが、実用的にはあまり不自由を感じない。どちらかといえば、写界深度が深いから同じ画角のレンズなら隅々までキリリと写って、取材写真に向いたフォーマットだと利点を感じている。
もちろん、明るい単焦点レンズを使えば背景がぼけた写真も簡単に取れる。
Lens : Olympus 45mm F1.8
ISO: 200
Aperture: 2
Shutter: 1/500
自然光で撮影
フジ曰く、フルサイズよりもよい画質だ
マイクロ4/3の開発者の言によれば「センサーが小さくとも我々の技術ならば大きいサイズを超えることが可能」だそうだ。具体的にどのメーカーのどのカメラを超えているのかまで公に発言しないけど、比較されても勝てる自信はあるようだ。
一方、APS-Cフォーマットの富士フイルムX-E1の開発者は更に血気盛んで「フルサイズのキヤノンEOS 5DII よりもよい画質だ」と雑誌のインタビューで具体的に機種名をあげて優位を主張していた。
さすがは富士フイルムである。同社は写真業界でもっとも色に厳しいメーカーで、色の出し方に関してはキヤノンは太刀打ちできない。そんな富士フイルムの言うことだからきっとその通りなのだろう。
だいたい、APS-Cよりフルサイズの方が画質がいいと主張するアマチュアに写真が上手い人はいない。そうしたヒトビトは自分の目ではなく観念でものを見ているからだ。観念でものを見ている人に、他人の心を打つ写真は撮れない。機材自慢しているだけだ。
フジフィルムがよい画質なのは当然として、では、マイクロフォーサーズの画質はどうなのだろう?
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雑誌に適したマイクロフォーサーズのアスペクト比
本屋さんで売っている雑誌のサイズは「A4変型」が多い。
コピー用紙でお馴染みのA4サイズは縦297×横210mm。
それに対してA4変型は、縦297×横235mmのように横がやや長い。 その主な理由は、A4サイズは縦長すぎてグラフィカルな誌面作りをするにはデザインバランスが悪いから。
通販カタログのような低予算のものはA4であることが多いが、商業雑誌はA4変形が普通だ。
ほかに、本屋の店頭で少しでも目立つようにとの編集部の願いが数ミリの長さに込められて幅広になっている。
実は「A4変型」は横の長さが決まっていない。しかし、2年ほど前に時代の流れもあってMORE、ViVi、CanCamなど各出版社の女性誌25誌程がサイズを共通化して297×232mmにした。 で、これらの雑誌とセンサーフォーマットとのアスペクト比を比べてみると、下図のようになる。尚、フルサイズはAPS-Cと同じね。
こうしてみると、フォーサーズのフォーマットは雑誌のアスペクト比に近い事が分かる。ということは、片ページ裁ち落とし(縁無し印刷)で写真を載せる場合、フォーサーズならほとんどトリミングをしないで掲載することが出来る。
せっかく、きっちり構図を決めて写真を撮っているのだから、出来るだけトリミングをしないで紙面に載せてほしい。フォーサーズはそんなささやかな希望に答えてくれるフォーマットだ。
一方APS-C(及びフルサイズ)だと端の方をずいぶんトリミングする必要がある。 ということは、APS-C(及びフルサイズ)は雑誌に載せるには余分な面積が多いフォーマットだといえる。
APS-Cとマイクロ4/3のセンサーサイズは僅差
次に、各フォーマットのサイズを比較してみよう。
実際のセンサーサイズは次の通り。
- 23.5×15.6mm (Nikon D7100)
- 22.3×14.9mm (Canon EOS 70D)
- 17.3×13mm ( マイクロフォーサーズ Panasonic GX7)
同じAPS-Cを自称していても、キヤノンはニコンよりもセンサーが一回り小さい。 それもあって、キャノンAPS機 と マイクロ4/3機との短辺の差は少ない。長辺はEOS 70Dの方が長いが、雑誌に載るときにトリミングされることを考えると、EOS 70Dとマイクロフォーサーズのセンサーサイズは実質的にほとんど同じと見なしてよいと思う。
プロは物撮りのときはトリミング前提で撮影するから、切り抜き写真なら「ほとんど同じ」を越えて「同じ」といってよい。
それどころか、DxOによるセンサーテストの結果によれば、EOS 70DよりGX7の方がセンサーの総合性能は高い。ということは撮影された写真は、EOSよりもマイクロフォーサーズの方が画質が良いかもしれないということだ。
実際には、写真の画質はセンサーだけでなく画像エンジンやレンズの性能にも依存するから一概には言えないが、おおざっぱにいってマイクロフォーサーズのセンサー性能はすでにAPS-Cに引けを取らないどころか凌駕している(こともある)水準にあることが分かる。
そして、マイクロフォーサーズのレンズは評価が高いものが多い。もともとフォーサーズは、センサーサイズがデジタル時代のレンズ設計に適したフォーマットだ。
APS-Cはフォーサーズよりセンサーがほんの少し大きいだけなのに、レンズは遙かに大きくなってしまう。 その上、マイクロフォーサーズはピント精度に優れている。
というわけで、取材用のカメラとして人気の高いAPS-Cの一眼レフよりも、フットワークに優れるマイクロ4/3の方がよりよい結果になることは当然だ。
APS-Cとフルサイズも実用上、仕上がりには大して差がない。というか雑誌に掲載された写真を見て区別がつく人はいない。 というわけで、ぼくの観点から見た各フォーマットの性能差を表す計算式は次のようになる。
フルサイズ ≒ APS-C ≒ マイクロフォーサーズ
と、まあ、強引ですが(笑)このような式を書いてみました。画質はほとんど同じです。画質に差がないなら、軽くてフットワークがよいマイクロフォーサーズの方がよいカメラだといえる。要するに、ぼくは撮影に気持ちよくマイクロ4/3を使っているのであった。 というお話しでした。
ディスカッション
コメント一覧
屋内での人物活動写真はフルサイズに分があると思いますが?
フルサイズでも本体やレンズにもよると思いますが。
特に素人が適当に撮るのならフルサイズの方が綺麗に撮れることが多いと思います。
「マイクロフォーサーズがプロカメラマンに選ばれる理由」というタイトルの記事なので、素人が適当に撮ったらどうなるかをここでは書いていません。
自分がいいと思ったカメラを使ってくださいな。
お金の制限がなければ、フォーサーズもフルサイズも、もっと言えば中版カメラもあったほうがいい。
1台を選べと言われると、悩むことになる。
買ってしまったら、「もし・・・なら」はやめて、愛機と連れ添うのがよいかなと思う。