Really Right Stuff の自由雲台BH-40で地中海の夜景を快適撮影
今回、イビサ島に持ってきた三脚のアシはベルボンのカルマーニュ630III。
ベルボンの看板製品の一つ、カルマーニュ63系は、最大パイプ径が28mmのカーボン製三脚で軽量な割にしっかりしたよい三脚だ。脚を止めるネジ式ノブが太いから掴みやすく緩めやすく締めやすく、たいへん使いやすい。
この三脚に問題があるとすれば、カルマーニュというラテンな名称がおやじギャグなセンスでいただけないこと。「軽い」ことを主張しているのだろうが、恥ずかしいよね。
カルマーニュ シリーズはモデルチェンジが重ねられて細部が変更され、名称もエル・カルマーニュと冠詞がついたりつかなくなったり(?)してネーミングのセンスが垢抜けないことを除けば、おおむねよい三脚だ。
RRSの自由雲台BH-40
三脚につけている自由雲台は、Really Right Stuff 製のBH-40 PF。
これに同社のクイックリリース B2 LR IIを装着している。
雲台と三脚の組み合わせは意外にセンシティブなもので、どちらもよい製品なのに組み合わせるとぶれやすくなるものがある。これは自分で使わないと分からないから、違う組み合わせの記事をネットで読んでも参考にならない。
カルマーニュ630III、自由雲台 BH-40 PF、クィックリリース B2 LR II、三脚ストラップの組み合わせで実測2033g。縮長65cm。このセットはしっかりしていて、いささかもブレない。そしていつも使っているリモワのスーツケースにぴったり入る長さ。移動が多い海外取材に便利なのだ。
Really Right Stuff は、趣味の撮影でアルカスイス社のクィックリリースを使っていたカリフォルニアのブライアンという名の職人さんが、純正プレートの品質が今ひとつであることを嘆いて自作プレートを造り、それを直販したブランド。プレートはいろんなカメラに使い回せる汎用品でなく、ニコンやキヤノンの一眼レフカメラの機種ごとに専用プレートを作っているから、精度と使いやすさは他に比類がない。
ブライアンは、写真界最高の機材メーカーであるアルカスイスのパーツを「今ひとつ」というぐらいだから、撮影道具に対する要求水準は非常に高かったようだ。
Really Right Stuff の創設者ブライアン語録
ブライアンはほかにも「一眼レフカメラを1/1000秒以下のシャッタースピードで手持ちで撮影してはならない。三脚を使いミラーアップしなければ画質が悪くなる」「ニコンAi-s 200mmマイクロ以外のレンズはすべて写りが悪い」という、かなり過激な意見をお持ちの職人だけに、彼が作った製品の品質は本当に「Really Right Stuff 」だと評判だった。
「すべて写りが悪い」と言われたって、どう反応したらいいか分からないよね。ぼくはニコンユーザーだけど200mmマイクロは持ってないし。たしかに同レンズは非常に評価が高いレンズではあった。
まあ、フィルム時代の話だから昨今とは事情が違うけど、ブライアンなら今でも意見は変わらないかも。
それにネット販売をしているにもかかわらず料金の支払いはクレジットカードを受け付けず、アメリカの銀行の小切手のみという、日本人に馴染みのない直販方法をとっていたため、ブライアンは「偏屈じじい」とか(敬意を込めて)呼ばれていた。
2002年にブライアンは12年続けたReally Right Stuff を71歳で引退して、現在のオーナーであるジョンソン夫妻に譲渡された。新しいオーナー夫妻のもと、製品のラインナップが大幅に拡大し、カード支払いを受け付けたことによって、日本(のみならず世界中)に利用者が広がった。しかし販売体制が直販のみであることは今も変わりがない。
カルマーニュにも似合うRSSの自由雲台
さて、以前、ぼくはカルマーニュ630IIIにベルボンの自由雲台を使っていた。
自由雲台によいものは少ない。重量のあるカメラとレンズをボールで支える構造だから製作には高い精度が要求されるのだが、それを実現できる製品はほとんどない。
というのも、ボールを確実に押さえるには、ボール側と押さえる側の曲面が完全に同じアールをしていなければならない、と考えがちだが、実際にはおなじ形を作るのは精度的に非常に難しいのだそうだ。だから販売されている自由雲台のボールは「面」でなく「線」で固定される。
それが、自由雲台でせっかく構図を決めても微妙にズレてしまう原因だ。
それから、ぼくはレバーを緩めたときに適度にフリクションがかかる自由雲台が好きだが、そういう製品も少ない。「しっかり締まっている」と「緩んでいる」の中間がなくて、レバーを緩めた途端にカックンとカメラが倒れてしまう。個人的にそれが好きになれないのも、選択肢を狭めている要因。
そして、クイックリリースにも、よいものが少ない。ハッセルブラッド社ややペンタックス中型用など各社のクィックリリースを遍歴したが、いずれも完璧とは言いがたい。
と、まあ、「よいものが少ない」を連発しているように、自由雲台とクィックリリースのクオリティに悩んでいるところへ、Really Right Stuff の2代目社長が2006年にBH-40 シリーズの製作販売を開始した。 同社のクリックリリースはシューもプレートも精度が高く、デザインも美しいことから、さっそく通販で両方を購入した。
今回、三脚と共に持ってきたのはD7000用のL字プレート。
L字だから縦位置撮影時も三脚の軸上にボディとレンズがくるので、大変扱いやすくて、構図も決めやすい。RRSのクィックリリースは評判に違わぬ使いやすさで大変よいから、三脚を頻繁に使う人にはお勧め。自由雲台BH-40のほうは、エクセレントというほどではないが使いやすくてよい製品だ。
先月、D7100を購入したけれど、RRSのD7100用専用プレートをまだ購入していないから、三脚撮影用にD7000を持ってきた。精度と使いやすさという点からRRSの専用プレートは一度使うと止められないが、機種を変更するとプレートも新調しなければならないのは、費用の点からいってイタイ。
撮影した写真
イビサ島の夜景はとても美しい。
しかし!
かつてヒッピーの聖地のひとつだったイビサ島は、7〜8月になるとナイトクラブで遊ぶために世界中から人がやってくる。こうして埠頭で写真を撮っていてもクルーザーが頻繁に往来して、シャッターチャンスがなかなかとれない。
それにしてもヨーロッパ(特にスペイン)は不況だというが、埠頭には豪華クルーザーが並んでいて、ドレスアップした女性がヒールを履いて降りてくる。どうやらこの人たちは不況という言葉は聞いたことがないみたい。いろんな世界があるなあ、とナイトクラブに関心がないぼくはただ感心するのであった。
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