海外旅行でスリにあわない対策は? どんな服装なら被害を防げる?
バルセロナの地下鉄3番線パラル レル駅で、ホームに入ってくる列車を撮ろうとカメラを構えたときのこと。
上の写真左側、向こうから歩いて来る男が、写真に写らないように紙で顔を隠している(これはその時の写真)。
西洋人には自意識過剰な人が少なからずいて、風景写真を撮るときに100m向こうの人があからさまに顔を背けることがある。まあ、神経過敏な人はどんなに遠くてもカメラが気に障るかもしれないね。そう思って、気にしないでいた。この時は。
男が顔を隠したままぼくの横を通り過ぎたときに、ちょうど列車が停まった。シャッターを切っているその時、背中に何かの気配を感じた。振りかえると、男がぼくの肩掛けバッグのジッパーを開けてのぞき込んでいる!
いやあ、驚いた。
文字通りぼくの「目の前」にいる男と目が合った。こんなに近くに! しかし大声で怒鳴りつけると平気な顔をして言ってしまった。先を急いでいたぼくはそのまま列車に乗ってしまったが、よく考えれば捕まえて守衛に突き出せばよかった。
地下鉄3番線は沿線にランブラス、カタルーニャ広場、グエル公園などがあり観光客が多い。だからスリも多い。そんな場所でファインダーを覗いているぼくは不用心すぎて格好のカモだろうね。
なお、後で聞いたら、スリは逮捕されてもその日のうちに釈放されるから、すぐに再犯するのだそうだ。警察に突き出されてもまったく困らない。どうりで平然としているわけだ。
スリは誰をターゲットにするのか
海外は治安が悪く、高価な一眼レフカメラを持っていると泥棒に狙われやすい。だからスリ対策・泥棒対策として一眼レフカメラは持っていかない方がいい。
ときどき、そういう話を聞くことがある。
場合によって「高価なカメラ」が「高価な服」や「高価なバッグ」だったりするが、基本的な考え方は同じで、高価なものを持ち歩くと狙われやすいということ。だから身につけるなら安っぽいバッグしよう、という記事もよくみかける。
もっともらしい意見だけど、しかしそれは現場を知らない人がそう思っているだけだ。誤解の内容を、マルバツ式で書くとこうなる。
- 高価なカメラを持っていると狙われやすい・・・・・ 〇
- 安価なカメラなら安全・・・・・・・・・・・・・・ Ⅹ
- ボロバッグだけ持って身軽にしていれば安心・・・・ Ⅹ
〇Ⅹの解説をしよう。
1)スリはどこにでもいる。確かに高価なカメラを持ち歩いていれば、泥棒に狙われる可能性も高い。これは間違いではない。
2)では安価なカメラなら安全かというと、そうでもない。スリがターゲットを選ぶ基準は「盗みやすいかどうか」という点だ。落ち着かない人、うかれている人、ようするにツーリストにすり寄ってくる。スマホを見つめている人はカモそのものだ。
3)持ち物は小さなボロバッグだけにして、服装も貧しげにすればよいという意見もある。これも間違い。どんなにボロな服装をしていても、ツーリストなら財布に小金を持っているに決まっているから、のんびり異国を歩いていればそれだけでスリのターゲットになりやすい。
スリは誰をターゲットにするのか
ここまで読んだあなたは、「それなら地元の人と同じ格好をしていれば、目立たないから安全だろう」と思うかもしれない。例えばロンドンは、イングランド人以外の人口が50%を越えていて人種のるつぼだから、どんな人であってもロンドン在住者だと思われやすい。短期の旅行中に現地の人に道を聞かれたという経験のある人は多いだろう。だから、自分は現地の人だと思われているのではないか、と錯覚するかもしれない。
しかし、それも間違い。
なぜなら、ツーリストを見慣れている人(スリ)は、日本から旅行できた日本人と、現地在住の日本人とを、十中八九見分けがつくからだ。特に女性は、服装もメイクも持ち物もそして歩き方までもが違うから、間違いなく区別が付けられる。
「海外の女性」はノーメイクかシンプルなメイクがほとんどで、フツーは日本在住の日本人女性のようにバッチリとメイクをしない。そのため、海外に住む日本女性もメイクは現地に馴染んでシンプルになりがち。そんなふうに明らかに外観が違うのだから、現地のスーパーの袋を持つくらいでごまかすの無理だ。
ある日本人を見て、その人が日本在住か海外在住かを見分けられるという感覚は、外国に住んだことがなければ分からないだろう。だから「現地の人を装えば安心」という都市伝説のような記事がネットでも出版物でもまかり通っている。記事を書いてるライターは海外に住んだことがなく想像で書いているから、現地感覚が分からないのだ。
でもね、プロのスリが、ツーリストと現地在住の人との区別がつかないなんてことはないんだよ。
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スリに狙われない服装はない
じゃ、海外旅行中はどうしていれば盗難を避けられるかいうと持ち物には常に気を配り、周辺の様子に注意を怠らないことにつきる。
しかしこれでは、緊張するばかりでのんびりと旅行はできないなあ。
そうなんだよ、「くつろいだ気持ち」と「スリ対策」は相反するのだ。
できれば自然に周辺に注意をはらえる研ぎ澄まされた感覚があればいいのだけど、平和なニッポンに住んでいたらそういう感覚は磨かれていないだろう。
それなら、一番いいのは、盗まれて困るようなものを持って行かないことだ。つまり、盗まれてよい物だけを持って行けばよい。そう発想を切り替えよう。
スリは気を抜いたときにやってくる
そうはいっても、やっぱり盗まれたらイヤだし、一日中気を遣ってもいられない。それにスリはこちらがちょっと気を抜く瞬間を待っているもの。そこで、あえて気を配った方がよいことを3つ箇条書きにしておく。
- 混雑したバスや電車ではバッグは身体の前に持ち、手を添えておく
- カフェで休むときはバッグを通路と反対側に置く
- 道端で誰かに話しかけられたら、反対側に注意する
パリ警察がつくったスリの注意喚起ビデオがよくできています。日本語版です。
上の箇条書きに注意していれば、だいたいスリを防ぐことが出来る。
が、それでも旅行中は気を抜く瞬間はあるものだ。だから、どうしても高価な物を持って行くなら、それに執着しないこと。カメラのメモリは旅の途中で入れ替えれば、万一、カメラが盗まれても写真が全部消失という事態は避けられる。そして、慌てず騒がず、新しいカメラを買えるいいチャンス!と気持ちを切り替えるとイイかもね。
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