小京都か小江戸か、城下町は雨で雰囲気抜群、なれども仕事にならず
ちょうど一ヶ月前、ぼくは宮崎県にいた。梅雨が始まる前の天気が安定しているうちにと取材旅行の予定を組んだのだが、あいにく「梅雨のはしりのはしり」とかで、飛行機で着いた初日から連日雨が続いた。
ぼくは九州へ行ったことがこれまでほとんどなくてよく知らなかったが、宮崎県を語るときに「南国」と枕詞がつくのは伊達ではなく、本州はもちろん四国よりも南に位置するから、宮崎市付近ではGWが開けたばかりだというのにもう田植えが終わっていて、本当に南国っぽかった。うちの近所の埼玉県よりも一ヶ月も早い(生まれ育った東京都多摩地区には田んぼがないからぼくはもともと田植えを見たことがない)のだ。
京都か江戸か、城下町を歩く
やってきたのは江戸時代の雰囲気を残す飫肥。読める?「おび」といって、江戸時代の武家屋敷町や町人町を歩ける九州の小京都というキャッチフレーズで有名な町だ。
場所は宮崎県の南部、日南市。宮崎空港からレンタカーで1時間走って到着、飫肥城近くの駐車場に停めて、まず大手門へ。
飫肥城の周囲は空堀で、新緑が雨に映えてすてき。
カメラを持って街歩き開始だ。ポンチョも靴もゴアテックスで雨対策は万全。しかし雨は止まないどころかますます強く降ってくる。個人的には雨の景色はわりと好きで、風情ある写真が撮れないでもないんだけど、お仕事となるとやっぱり晴れてほしいものですな。
GW直後だし雨が降ってるしで観光客がほとんどおらず、街を歩いているのは買い物帰りの地元のお婆さんくらい。
雨の日は色温度が高くて写真が青っぽくなりがち。
後町通りの石垣沿いの水路には錦鯉が放流されていた。家の前に用水路がある風景は日本っぽくて好き。昔はここで野菜を洗ったりしていたはずだが、いや、武家屋敷の正門前では野菜は洗わないかな?いずれにせよ役目が薄れた今では錦鯉を放流して、城下町の風情を演出している。
水面にできる波紋が雨を物語る。日本画みたいで美しいね。とはいえ、飫肥に着いてまだ1時間も経ってないけど、今日はもう撮影はやめようかな。といって予備日が用意されていわけではないから、どうしようかあ。
町の南側には拡幅された国道222号が通っている。城下町の景観を守るため日本建築にしなければならないそうで、こういった景観保護規制は日本各地でもっと実施すべきだと思う。それはともかく天気は薄暗くなる一方だ。
ぼくはハズレのない晴れ男と自負しているのだが、数年前からちょっと外すことが時々おきる。今回も5月中旬だというのにこんなに雨が続くとは。運命が少し変わってきたかな。
コロナ禍のおかげで旅するフォトグラファーもあわや休業かと思ったけど、海外へいけなくても国内を旅すればいいので、運命が変わってもそれはそれで新しい発見があって、人生はつねに新鮮だ。
大手門近くの横馬場通りは、江戸時代は家老など上級武士の屋敷があった地域で、たいへん趣がある。雨が降り続いてやむ気配もないので、服部亭という明治時代の豪商の屋敷を利用した和食&カフェに入って、一休みすることにした。ガラス戸の向こうに広がる、手入れの行き届いた庭を楽しみながら味わうコーヒーは格別。
ひろーい畳敷きで、他に客がいないし横になってゴロンとすることもできそうだが、さすがにそれはしなかった。コーヒーを飲んでから庭を一周したら、つつじの花がそこかしこで咲いて雨のなか鮮やかだった。
ここ服部亭は昼のみ営業で、郷土料理のランチセットが1600円と、ロケーションとクオリティ(まだ食べたことはないけど美味しいと評判)を考えると破格で、必ず次回はここで昼食をいただくことにしようと決意した。町の風景も、そのときにあらためて再撮影することにしよう。そのときは天気は晴れるに違いない。
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