桜の森から、日本史上最初の金運アップ神社まで、ミニハイキング
桜の名所といわれる秩父の美の山公園へ行ってきたよ。
美の山公園は「東国の吉野」をイメージして、秩父ではめずらしい独立峰の蓑山の頂上一帯につくられた公園。秩父鉄道の親鼻駅で降りればすぐに登山口から歩き始められる、気軽なハイキングコースとして人気が高い。天気がいい先週の金曜日に、そろそろ見頃と期待して出かけてきた。
10:25親鼻駅
親鼻駅の駅名表示板にも「美の山登山口」と書いてある。
秩父鉄道は荒川に沿って敷かれた埼玉県のローカル鉄道。人生でこれまで乗る機会がほとんどなかったので、ホームに立つだけですごく地方へ来た感じがする。
長瀞から荒川を越えればすぐに親鼻駅に到着。下車後、駅裏の国道140号線を渡ればもう目の前が美の山だ。ぼくは昨年、取材で何度か美の山に車で来たんだけど、今回は歩いて登ることにした。
本来は蓑山だが最近は「美の山」と書かれることが多い(なんか埼玉県らしい)この山は、標高581.5mだから山が聳えるというほどではなくて、丘という感じ。頂上付近が美の山公園だ。
国道を渡るとすぐに萬福寺というお寺の前を通るので、本堂前へいってお参りをした。萬福寺は平安時代の古刹で、真言宗のお寺。このあたりはヤマザクラが五分咲きくらいで濃いピンク色の花がまぶしい。
美の山に登る人たちの服装をみるとゴアテックスのジャケットとか、ハイカットの軽登山靴とか、まるで標高2000mの山に登るようなしっかりした格好をしているけど、ここはぼくの感覚では夏ならサンダル(havaianasじゃなくてTEVAの)で歩けるささやかな丘。片道1時間半程度の道程だからね。
10:30 登り口に立つ
萬福寺を過ぎたら、すぐに登り口が見えてくる。
小さな祠にご挨拶の合掌をして通りすぎた。神さまにもご挨拶は合掌でよいのです。
このあたりの山道はところどころ濡れているところがあった。
最近雨が降ったっけ?
10:54 道路と交差
登り口から20分ほどで自動車道路と交差した。昨年の秋は、この道を車で走って、山腹のホテルに泊まってゆっくり雲海の取材をしたのだが、今日は歩いて登っていく。
天気がいいですな。
新緑がきれい。ヤマツツジが咲き始めている。登り口からずっと尾根を登っている。美の山は独立峰で周囲を自動車道路に囲まれているから道に迷っていつのまにか別の山へ行ってしまう心配もない。
11:22 見晴らし広場が見えてくる
山頂に近づくとこれまで歩いていた落ち葉が積もった山道が、石畳やアスファルトで舗装された道になる。あの階段の先は、もうハイキングコースではなく公園内の散歩コースだ。
11:53 榛名神社
美の山公園内には神社がいくつかある。榛名神社の前には東屋と展望台が設けられていた。
この辺は、ゴアテックスジャケットの山歩き老人と、山頂の駐車場から歩いてきた街着の若いカップルが行き交ってる。平日なので年寄りのほうがずっと多いようだ。
もう少し歩けば桜の森 。ここにも東屋があって、お弁当を食べるのにちょうどいい。敷き物があればその辺に座ってくつろげる。
こんなに桜がきれいなのに平日だからかほとんど誰もおらず静かで贅沢な空間だ。美の山には70種以上約8000本の桜が植えられるそうで、いろんな色の桜が咲いてとってもきれいでしたよ。
美の山公園は、4月に桜、5月はヤマツツジ、6-7月はアジサイが咲き、春から初夏にかけてはいつ訪れても花が満開だそうです。
13:14 山頂に到着
榛名神社から山頂へは、ランチしたり、桜をじっくり見たり写真を撮ったりしたんで、徒歩数分以下の距離に1時間以上かかってしまった。
美の山の山頂に586.9mと記された標識が立っている。近くの展望台上に置かれた三角点にも同じく586.9mと刻まれているが、その後、計測し直して、現在は標高581.5mと国土地理院の地図に掲載されている。
埼玉県に訊いたら、現在は標高581.5mが正しく、この標識が古いことは認識していたので、まぎらわしいからせめて標高を修正するくらいしてもいいと思う。
秩父盆地を見渡す桜の園
山頂のソメイヨシノは、先週の金曜日はまだ5分咲きといったかんじだったから、満開は昨日くらいかな。今日行ってもまだ十分楽しめるだろう。
山頂の展望台から周囲を眺める。中央に聳えているのが秩父の護り神、武甲山。
展望台の上に水準点が立っている。
13時を過ぎたらだんだん人が減ってきた山頂公園は、14時になるとすっかり閑散としてきた。そろそろぼくも下山するか。
14:00 下山する
下山は、尾根沿いに南へ下るのではなく、東へ山腹を一気に降りて、秩父鉄道の和銅黒谷駅へ向かうコースが一般的だ。
結構急な下り坂で、落ち葉が積もって滑りやすい道だった。
14:29 黒谷の集落に到着
山頂から30分ほどで黒谷(くろや)の集落に到着。ここからはのどかな農村を歩くのだが、自動車も通れるアスファルトの道だから歩きやすい。
農村には、桜だけでなく真っ赤な花桃が庭先によく植えられている。
花桃は、桃色や、白の木もあって、縁起がいいからか道沿いによく紅白が並んでいた。桜も紅白で(?)植えられていたりして、本当に明るい農村風景であった。
ピンク色に咲き誇るヤマザクラが見事ですな。
まるでネパールの山村を歩いているみたい。この写真をネパール人に見せて、タマン族の村の写真といって見せたら信じるかも。
14:52 金運上昇、聖神社へ
国道140号線近くに聖神社が鎮座している。金運上昇の神さまを祀る、たいへん由緒のある神社なので、こちらもお参りする。
聖神社の建立は日本史上の重大事件に関係するので、簡単にお話します。
律令時代に、国号を倭から日本に変更し、大王は天皇となった我が国は、国際社会に積極的に参加するために物々交換経済から貨幣経済への転換が必須だった。しかし、通貨を作ろうにもその素材となる質の良い金属がないという悩みがあった。そこへ、秩父でよい和銅の鉱脈がみつかったという知らせを聞いて、天皇は大喜びで元号を慶雲5年から和銅元年(西暦708年)に改めた。それを祝って建てられたのがこの聖神社だ。
通貨を鋳造すれば、ちょうど計画中だった奈良の都の平城京の建設費用もこれでまかなえるという算段もあった。そんなこんなのいいこと尽くしの話から、聖神社は、いわば日本で最初の金運上昇の神さまを祀る神社として人気が高い。しかし、残念ながら貨幣経済への転換は結果的に失敗し、日本は物々交換を基本にする時代がこのあと長く続いた。
並ぶ絵馬をみると、皆さん御利益を強く願ってらっしゃいますね。人間の欲望がつらつらと並んでいて読み甲斐がある。
ここまで書いていてなんだけど、実は、ぼくはふだんから神社に"金運上昇"はぜんぜん期待してないない。だから金運上昇を願うこともない。では有賀くんは神社でなにを祈っているの?と訊かれたら、神々に世界平和を祈念しています。どこの神社でも同じ。
聖神社の参拝客はみな車で来ていた。美の山にハイキングに来た年寄りたちは聖神社をほとんど素通りしていくようだ。年金暮らしなら金運は上昇も下降もないからかな。
日本国成立とともに歴史を重ねる、歴史好きにはたまらない神社。ちなみに、金属の和銅はにぎあかがねと読む。元号や駅名はわどうで、ちょっと分かりにくい。
15:15 和銅黒谷駅に到着
ようやく和銅黒谷(わどうくろや)駅に到着した。
親鼻駅から和銅黒谷駅まで、ふつうなら3時間程度のショートハイキングコースなんだけど、お花見も兼ねていたから5時間かかった。花あり、神社あり、充実したコースであった。
レトロな時刻表がかかってる。
線路の向こうに武甲山が聳えている。プラットホームにも和同開珎のモニュメントが置いてあります。なんてったって元号にもなった和銅ですからね。
というわけで、楽しいハイキングは終了。
ブログ内の関連記事
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません