ここは夜景百選の撮影スポット、晩秋の早朝なら雲海も美しく撮れる
今まで知らなかったのだが夜景100選というのがあって、埼玉県で唯一選ばれたのが秩父の美の山公園からの眺め。早速、夜景と雲海を撮影に行ってきた。
美の山公園は、蓑山という標高581mの山の頂上付近にある。なんで蓑山公園でなくて美の山公園という名前なのかは知らない。で、蓑山の中腹にある美の山ヘリテイジという名前はエレガンスなホテルに泊まって、夜景と、早朝の雲海を両方撮ろうと算段した。
残念ながら宿泊した日曜日は天気予報が外れて一日中曇天だったので夜景撮影には行かないでホテルで温泉に入ってのんびりとくつろぐことにした。
今回のミッションで重要なのは早朝に現れる雲海だから、こっちに専念するというわけさ。美の山公園は雲海のスポットとしても有名で、Twitterで気象予報士が翌朝の雲海情報を毎晩発信しているほどだ。
5:00 美の山公園に到着
まだ真っ暗。美の山ヘリテイジから車に乗って山頂へ続く道に出たら、ちょうど同じように山頂へ向かう車のテールランプが見えたから後を着いていくことにした。慣れない夜道は誰かの後をついて行くのが簡単だ。美の山公園へは車で5分くらいだけどね。
第1駐車場に着いたらすでに満車だった。ここは16台分のスペースしかない。仕方がないから少し離れた所に停めて、LEDライトを手にして歩き始めた。通い慣れた人はこの時刻なら初めから第2駐車場に停めるようだ。
5:20 東の空があかね色に染まる
美の山公園の展望台から、東を見れば空があかね色に染まりつつあり、西を見れば武甲山と雲海が広がっていた。神仏のご加護を得て、今日もよい風景に会えた。
武甲山は、日本武尊が山頂に登り、天の神・地の神を祀ったといわれている。山そのものが神だ。秩父盆地には日本国が成立する以前から聚落があり、武甲山の神と山から流れる水によって栄えてきたそうだ。
5:40 山頂に少しずつ人が集まる
美の山公園の第2展望台には、ぼくが朝5時に着いたときには三脚を構えた人がすでに2人いたのだが、そのうち1人はまだ暗い5時半に三脚をたたんで帰っていった。たぶん地元の人で、あらかじめイメージした構図を決め打ちして、それ以外には興味がないのだろう。地元の人ならではの贅沢な撮影だ。
上の写真のいちばん左に立ててあるのがぼくの三脚。それほど寒くはないけど、ダウンジャケットを着ている人もちらほらいた。三脚を立てているのはみなオジサンで、女性は手持ちスマホが多いですね。
5:52東の稜線から日が昇る
太陽が昇るシーンは、何度見てもいいものですなあ。ほとんど音がしない空間で、巨大な太陽が動いて、山々が形を表してくる。大自然を感じます。
雲海は、日本百名山のひとつ、両神山の方まで広がっている。両神山はりょうじんさんと読むのかそれともふたがみさんと読むのかと迷っていたらりょうかみさんだった。日本語むずかしいです。雲海はときに美の山公園を360度囲んで、公園がさながら海に浮かんでいるかのように見えるらしい。
今日はそこまでにならなかったものの、雲海の状態は厚く広く、今季でもっともよかったそうだ。雲海は、湿気が多くてよく晴れた朝に出るもの。ここ数日は、天気がすぐれなかったこともあって雲海が現なかったと、後からホテルの人に聞いた。
6:15 満足して帰る人たち
6時を過ぎると展望台は、帰る人とこれから来る人が少しずつ入れ替わっていく。
6時半ごろなると太陽の光が雲海に当たって、明暗の陰影のみならず、色温度の陰影が織りなす美しさが眼下に広がっていた。
日が昇ると風も出てくる。気温も変化する。もう少ししたら雲海は消えていくだろう。そろそろ終わりにするか。いや、1日はいま始まったばかりだけど。
6:40 展望台を後にする
振り返って展望台を見ると、まだ粘っている人が何人かいた。
ところで今朝、ぼくが美の山公園に着いたときに第1駐車場には20台あまりの車が停まっていたのに、ふたつある展望台には計5人のカメラマンしかいなかった。ほかの人はどこで何をしているのだろう? もしかして雲海を見に来たのではなく夜露の下で女としけこんでいるのだろうか? という疑問があったのだが、近所のアマチュアカメラマンが教えてくれた。展望台以外にも雲海撮影ポイントがあって、おのおの自分なりの撮影を楽しんでいるのだそうだ。なーんだ。
静寂のなかで、うるさいオートフォーカス合焦音
展望台で雲海を撮影していたとき、ピピピッとAF合焦音をさせて一眼レフで撮影しているオジサンがいた。熱心な人らしく、1分置きに段階露光して3枚コマ切っててかなーりうるさい。この静寂さのなかでピピピッとひっきりなしに音を鳴らし続けられる無頓着さを讚えてあげたいものです。で、近寄って小さな声で「済みません、オートフォーカスの合焦音をオフにして撮影していただけないでしょうか」と丁寧にお伝えしました。
するとおじさんは「オレは50年写真を撮ってるけど今までそんな撮り方をしたことがない。そんなことを言われたことも一度もない」とお返事をなさいました。「おまえに写真の何が分かる」とまで言われてしまい話が大きくなりそうなので「ここで写真を撮っている人はたくさんいますが、AF合焦音を出しているのはあなただけです。こんなに静かな環境でピーピー音を鳴らしたらうるさいです」と率直に申し上げたら、ひどく怒っていらっしゃいました。が、その後合焦音をオフになさいました。ご理解いただきありがとうございました。
これでわたくしも、大自然の静寂さに浸りきりながら撮影が続けられました。
7:00 温泉で朝風呂を楽しむ
ホテルにもどったら、そのまま大浴場へ直行だ。
ちょっと冷えた身体を暖めた。大浴場で湯に浸かりながら窓外の雲海を眺めていたら、あっという間に雲海が消えていった。遠くに赤城山が見える。今日は快晴、撮影日よりだ。
このホテルは朝食開始が7:30からで少し遅めだと思ったけど、雲海と朝風呂を楽しむ時間が考慮されているのだった。なかなか充実した1日のスタートだ。
追記:三峰神社から見た雲海
その4日後、10月15日の朝、ぼくは三峰神社の遥拝殿にいた。ここは奥宮を拝しつつ、同時に秩父市内の雲海を眺められる絶景ポイント。今朝も雲海が厚く出ている。ここからはあたかも雲海に浮かぶような美の山が見えた。
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