『インスタ映え女子』がプールいっぱいに増殖していた
インスタグラムで検索したら、その結果に驚いた。
検索語は「#バリ」。そこには水着姿の若い女性たちが楽しそうに微笑んでいる写真ばかりが並んでいるではないか。
バリ島ってこんな島だったっけ? よく見たら水着ばかりではなくて、肩出しワンピースの人もいるけど、どれも露出が多くて開放的なイメージの格好ばかり。
半年ぐらい前に、同じ「#バリ」で検索したときは、こうではなかった。もっとフツーに楽しげなツーリストの写真や、儀式にいそしむバリ人の家族写真とか、いろんな写真が並んでいた。それが今では露出度の高い服を着た女子の「バエ写真」ばかりが並んでいる。
たった半年でずいぶん変わったなあ。
ちょうど、上のインスタ人気投稿に写っているフローティング ブレックファストのお店に立ちよる機会があったので、バエの現場がどんな様子なのかを見てきた。
インスタ映え写真撮影現場
おお、やってるやってる。
…なんか、楽しそうですなあ。
こんなふうに写真に、ひとつだけフローティング ブレックファストが写っていると、爽やかな朝を独り占めしたかのような美しい光景を感じる。
しかし実際にはプールを独り占めすることはできない。そこは、こんな場所だった。
ここにいるのはなぜか東アジア人が多くて、日本人か中華のどちらかがほとんど。西洋人もいるけど少ない。日本人はほぼ全員が20代前半の女子。たぶん卒業旅行できた女子大生だろう。男の子はカップルの片方に限られる。まー、男たちがプールに浮かびながら朝食を囲んでいたらヘンな雰囲気かもねえ。
もともとフローティング ブレックファストは、ヴィラのプライベートプールでカップルが楽しむプログラムだった。完全にプライベートを確保された場所で、ふたりきりでプールに浮いて楽しむ朝食だ。それはそれはロマンチックでステキな体験だ。
それを、高級ヴィラに泊まれない層でも楽しめるように町のレストランが同じようなメニューをつくったら大当たりした。
インスタグラムにつぎつぎに写真が載せられて、人気が人気を呼んでいる。高級ヴィラと、一般レストランとでは雰囲気がまったく異なるのだが、インスタの加工された写真にそこまでは写らない。
こうしてプールサイドにいると、ときどき日本語で「ばえ〜」という声が聞こえてくる。昨今はインスタ映えするロケーションやシチュエーションが、単に「バエ」と呼ばれている。「バエ」が名詞化している。庶民が、ささやかな自己顕示欲を満たす現場で飛びかうワードなのだね。
少し前まで、バリ島の寺院を訪れる若い女性はバリ式の礼拝をしてからお清めの儀式をしてもらったものだが、昨今は門前で写真をとったらすぐに次のバエに移動していくと、ガイドをしているバリ人に聞いた。かつてバリ島は「神々の島」と呼ばれていたが、女子たちにとっては、いまやインスタ映えの島でしかないのであった。
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