バリ島の世界遺産スバック
バリ島の伝統的な灌漑組合スバックが、ユネスコの世界遺産に登録された。
世界遺産に認められたキーワードは「水」であり、また「人と、神と、自然との調和」だ。その調和の心は「トリヒタカラナ」とも呼ばれ、美しい棚田となって形にあらわれる。
スバックは、高低差が激しいバリ島で公平に水を分配するために、千年以上前から発展してきた、農地と農民を支える組織。バンジャール(町内会)と併せてバリ人の生活に欠かせない。
カランアサム県シドメンでは、スバックの方針によって、村全体が稲作と畑作とを1年おきに輪作している。上の写真は昨年7月に撮影したもので、田植えをしているところ。下の写真は本年7月のもので、畑になっている。このふたつはやや離れていて同じ場所ではないが、確かに本年は、シドメンで水田を見ることはできなかった。
下の写真の右側に、小さく小さく写っている赤い服の人は、シドメンのスバック組合長で、ここは彼の農地だ。
場所によってスバックの運営は異なり、輪作をしなかったり、一部だけ畑にしたり、土地とのつきあい方にも地域性がある。共通しているのは、人との調和、神々との調和、自然との調和、このバランスをとること。お米の神さまデウィスリを祀ったお寺は、バリ島のどこへいっても必ず田んぼの中に建っている。
バリ島と日本の共通点は、ともに瑞穂の国であること。
みっつの調和を大切にするトリヒタカルナの心は、日本人が古くから大切にしてきた精神でもある。バリ島のトリヒタカルナは、正確に表現すると「人と人、神と人、自然と人、それぞれの調和」ということだそうだ。これを聞くと、昭和30年代以前の日本の農村の景色を連想しませんか。水田があって、村の鎮守の神さまの社があって、人々がそこで働いている。
昔の日本の農村風景なら、世界遺産に登録できたことだろう。現代ではどうだろう?
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません