標高4200m、コンデホテルを出発して水面鏡に映るエベレストを撮影
暗闇の中で目が覚めて、ベッドから飛び起きた。目覚ましをセットした4時まで、あと3分というタイミングだった。
ヘッドライトの光で着替えをした。ダイニングルームでミューズリー・玉子焼き・トーストの簡単な朝食をとって、そそくさと出発した。
逆さエベレストが見える池
目的地のコンデレイクは、エベレストをはじめヒマラヤの山々を鏡のように水面に映す池。コンデ山のふもと、標高4800mの地点にある。トレッカーはコンデ レイクと呼んでいるが、土地の人は名前が無い小さな池なので、単に『池』と呼んでいる。
今回は、その池の写真を撮るために日本から片道一週間かけて、標高4200mのコンデホテルまで来たのだ。
ぼくは、Lumix GH5+12-60mm/F2.8-4だけを、斜めがけストラップにつけて身軽に歩くことにして、残りの機材はガイドに持ってもらった。
持ってもらったといってもボディはLumix G9が1台と、LEICA 8-18mm/F2.8-4.0、LEICA 50-200mm/F2.8-4.0の2本のズームレンズ、それに三脚だけだから軽いものだ。
少し遅れて、同宿のシェルパのおじさんも出発した。このおじさんはカメラマニアで、キヤノンの一眼レフ2台と、EF600mm/F4単焦点レンズ、EF11-24mm F4L 、それから2週間前に発売されたばかりで予約して手に入れたというEF 70-200mm/F2.8 IIIを持っていた。
総額200万円を超えている。昨晩、コンデ レイクの話をしたら興味を持って、ぼくと一緒に出発することにしたのだった。
おじさんもポーターがいるが、なにしろフルサイズの機材をたくさん持っているから任せきれないらしく、自分も機材の入ったリュックを背負っていた。写真好きというのは体力がいるなあ。
5時15分頃になると、薄暗いながらもヘッドランプがなくても歩ける程度に周囲が明るくなってきた。
エベレストの頂上に当たる朝の光
振り返ると、エベレストの頂上に朝の光が当たり始めていた。
やっぱりエベレストは世界最高峰なのだ。8000m峰が並ぶヒマラヤ山脈のピークのなかで一番最初に光が当たる。
GH5のファインダーを覗き、朱色に染まりつつあるエベレストを見ながらシャッターを押したら次の瞬間、ファインダーに『バッテリーがありません 』と赤文字で表示された。
しまった。ミラーレスカメラの弱点はバッテリーだ。そしてGH5は、以前のミラーレスカメラGH4などよりも高性能なぶん電池の消耗が速く、たいして枚数を撮らないうちにバッテリー切れする。
それなのに標高4200mのマイナス4度の斜面をカメラをむき出しで歩いてしまった。これではバッテリーが一気に消耗するだろう。掴んだGH5のグリップは冷たかった。
あ〜あ何てことしたんだろう。常温でもニコンの一眼レフなら電池1個で1000コマ以上撮れるところを、GH5は250コマぐらいしか撮れない電池食いカメラだからなあ。
どうしても撮らなければならない写真でもないので、朝日に染まる朱色のエベレストを撮るのをやめた。昨日、夕陽に染まるエベレストを撮影したからそれでいいや(本当にそれでいいかどうかは知らない)。
そしてショルダーバッグの中の予備電池が4個入った袋を取りだして、フリースジャケットのポケットにしまった。電池の保温のために。基本中の基本なのだけどね。最近の一眼レフカメラはこのくらいの寒さはなんともなかったから対策をとるのを忘れていた。
標高4800mの池に到着
目指す池は標高4800mにある。コンデホテルとの標高差は600m。高山植物がびっしりと生えて、ヤクが踏みならした獣道が行き交っている斜面を登っていたら、後から犬が2頭、ついてきた。
この犬たちはどこから来たのだろう? コンデホテルから徒歩で半径2時間以内に人家はないから、飼い犬ではないと思う。
そうして歩きながら標高4851mのシェルパピークのふもとあたりに着いたら、シェルパピークを右に見て斜面を登ると、やがて池が姿を現した。離れた所からは見えない池なので、突然目の前に現れる感じ。
池に名前は無く、ただ『ポカリ』と呼ばれている。ポカリはネパール語で池の意味。ここまでホテルからきっかり2時間で登ってきた。
みごとな景観だ。
右からアマダブラム、ローツェ、エベレスト、ヌプツェなどの名だたる峰が並ぶ。
わざわざ日本から片道一週間かけて「水面に映るエベレスト」の写真を撮るためにここまで来たのだから、なんとか目的を達成できてよかった。カメラマニアのシェルパのおじさんによれば、昨日は一日中曇りがちでヒマラヤはハッキリとは見えなかったそうだ。ああよかった。
ところで、今朝、ホテルを朝5時に出発したのは理由がある。
それは、日が昇ってしばらくすると風が吹くからだ。すると池がさざなみ、ヒマラヤが池に映る光景が見られなくなる。そして、ヒマラヤにちょうどよい立体感のある光が当たるのが朝9時頃であること。それから、今の季節は午後になると雲がでてきて山が見えなくなること。
というわけで、ここに朝7時から9時過ぎまで滞在する予定だ。
しかし、早朝でも微風があって、シャッターチャンスは多くはなかった。風が止まるのを待っていたら、先ほどの犬たちが三脚の周りに集まってきてくつろいでいた。
それにしても、この犬はどこから来たのだろうか。やけに人なつっこい。カメラマニアのおじさんのガイドに聞いたら、昨日、ターメ村から歩いてきたトレッカーにくっついてコンデホテルへ来たらしい。そして今日は、ぼくについてこの池まで来たのだった。
とにかく、気持ちのいい空間だ。
周囲5km以内で、写真を撮っているのはぼくとシェルパのおじさんだけ。ぼくは、こんな広々とした、宇宙を感じさせる空間で写真を撮るのが好きだ。
最後に、この池の近くにシェルパピークという展望ポイントがある。そこから見える6000m〜8000m峰を列挙しておく。シェルパピークはクーンブ山域でもっとも展望のよいポイントのひとつだが、あまり知られていない。ぜひ訪れてみたいものだ。
クスムカンガルー・
タムセルク・
マカルー・
バルンチェ・
アマダブラム・
ピーク38(白い壁)・
ローツェ・
エベレスト・
タボチェ・
チョラツェ・
チョーオュー(少し見える)・
パサンラモチュリ・
プタリ
ディスカッション
コメント一覧
素晴らしい景観ですね。どこに宿泊されたのですか?
Tengboche3860でしょうか?そこから近所の山に登られたということでしょうか?
こんばんは。
宿泊したのはこのホテルです。
タンボチェではありません。タンボチェもエベレスト山群の眺望がいいですが、こちらはさらによいポイントです。