アメリカの黒歴史、9.11の裏側を描く人間ドラマ【倒壊する巨塔】

雑記

2001年9月11日の夜、畳の上に寝ころんでくつろいでいたぼくに、友達から電話がかかってきた。「ニューヨークのビルが火事だよ」言われるままにテレビのスイッチを入れ、映し出された画面を見て、息を呑んだ。

ニューヨークの貿易センタービルがふたつとも黒煙を上げていた。状況を把握するのに長い時間がかかかった気がするけど、数秒だったかもしれない。

緊迫したアナウンスを聞きながら画面を見つめていたら、さらに驚くべき光景が始まった。突然、貿易センタービル南棟が崩落した。こんなことが現実に起きるのだろうか。「映画を観ているとしか思えない」誰もがそう思ったことだろう。今、ニューヨークで起きていることを衛星中継で見ながらも、ぼくは、これが現実のことだとは受け入れられずにいた。続いて北棟が崩壊する様子をみて呆然とするしかなかった。

テロを実行したのは誰か

世界中に激震が走ったこの同時多発テロは、合衆国政府による陰謀説がささやかれている。いわく、中東で戦争を起こしたいブッシュ政権が仕組んだ事件であると。合衆国政府が事前にテロを知っていたらしい証拠もあげられている。日本の週刊誌や書籍でもそう主張する媒体は少なくない。はたしてそれは本当のことだろうか。

この疑問に答える本がある。アルカイダの指導者ビンラディンや、FBIのオニール捜査官を始め、事件に関わった人物を膨大な資料から描いたノンフィクション倒壊する巨塔The Looming Tower 。2007年のピューリッツァー賞を受賞した大作だ。

そして、本著を映像化したドラマが作成され、今春からAmazon Primeで配信されている。タイトルは『倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道』、英語原題は The Looming Tower。FBIのオニール捜査官と、CIAアレック支局のシュミット支局長が背を向けているイメージ画が印象的。

物語は、1996年、反米のアラブ人たちが大規模テロの準備が進め、その兆候にFBIが気づくところから始まる。

登場人物はほぼ実在する人物

主要登場人物はほぼ実在する人物だ。テロの捜査に奔走する主役のオニール捜査官やイスラム教徒のスーファン捜査官は実在の人物。一方、CIAのシュミット支局長はモデルとされる人物がいることは明かなものの、適当に輪郭を変えて描写されている。本作において、同時多発テロの真の悪役はアルカイダではなく、テロの情報を得ていながら隠していたCIAだったことによる。

テロを計画したのはイスラム教徒のアラブ人だが、実現に至ったのはアメリカの役人たちのセクショナリズム、情報隠し、足の引っ張り合いがあってこそだった。FBIが捜査をしてもCIAは非協力的だった。

英語原題の The Looming Tower は「そびえ立つ塔」という意味だが、コーランの一節『汝らがどこにいようとも、死は汝らを見つけるだろう、たとえ汝らがそびえ立つ塔にいようとも』からとっている。ビンラディンは同時多発テロ決行の前に、テロ実行者たちにこの一節を3度繰りかえしたという。

脚本も映像も、Huluの制作でクオリティがたいへん高い。オニール捜査官の性に奔放な私生活や、熱心なムスリムのスーファン捜査官の泥臭くさい描かれ方がリアル。そしてオニール捜査官は、実話とは思えないほど数奇な運命をたどる。結末は誰もが知っているが、そこに至る過程は感無量だ。

無料配信は日本のAmazon primeだけらしいので、加入者ならぜひ見ておきたい力作だ。未加入なら、これを見るために加入してもいいね。公式サイトはこちら。全10話構成。

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Posted by ariga masahiro