ドンキホーテが闘った風車の丘。ここで、ラマンチャの男女は日没まで踊った
ラマンチャの男といえばドンキホーテ。巨人と思い込んで風車に戦いを挑んだスペイン文学史上の有名人を知らない人はいないだろう。
ラマンチャの荒野と風車
ラマンチャ地方には今も16世紀に活躍した風車が残っている。ここコンスエグラの丘に建つ風車とそのまわりの景色は、おそらくドンキホーテが活躍した当時となにも変わっていないだろう。ただ、荒野が広がっている。
16世紀と違うのは、今では風車の羽根はまったく動いていないことと、荒野の丘がツーリストの人気を集めるインスタスポットになっていること。
それから夕陽を眺めるデートスポットになっていること。あ、これは16世紀のころもそうだったかもしれないね。ぼくが知らないだけで。
なんてロマンティックな夕景だろう。
この写真に写っている太陽は、ぼくの肉眼での太陽の見え方とまったく変わりがない。マイクロフォーサーズのカメラで撮影しているんだけれど、Panasonicのライカレンズはよく写る。乾燥したラマンチャの地平に沈む太陽は光が強すぎて、丸いはずの夕陽の形が目で見えないんだよ。
みるみるうちに日が沈んでいく。
湿気の多い日本や、熱帯で見られるあのねっとりした夕陽は、ここでは見られない。太陽は直視できないほどまぶしいまま、地平線に消えていくんだ。
ラ マンチャとは、もともとはイスラム教徒がマンサ(水のない土地の意)と呼んだことがその名の起こりになっているそうだ。沙漠の民にそう呼ばれるくらいだから、ここはほんとうに水が少なくて空気が乾燥している。それで、太陽も強烈に輝いている。
スペインの古民家に泊まる
コンスエグラでも、古い屋敷に泊まることにした。このところ古民家づいているというか、古い建物は雰囲気があって楽しいからね。レンタカーは、屋敷の前は満車だったので、奧の公園の脇に停めておいた。
寝室・居間・キッチンなどがついたアパルトメント(アパートメント)式の宿だ。べつにアパルトメントである必要はまったくないんだけど、ちょうどお祭りの時期で部屋がとれなくて、町で唯一空いていたアパルトメントにちょっと高かったけれど泊まることになった。
ここがお泊まりの部屋。少し昔のお屋敷の風情がある。ベッドはギシギシいって古めかしいけれど、それにもまた古民家風情が感じられる。
夏ならいいけれど、冬はけっこう寒いかもしれないな。秋の居心地はまあまあ。
アパルトメントは、スペインらしい装飾のパティオを囲んで各部屋が配置されている。そのパティオはバルになっていてローカルの客が一日中お喋りをしていた。
パティオでお姉さんが入れてくれたカフェを飲んでもいいんだけど、せっかくキッチンがあるから自分で入れて飲んでもいいな。
コンスエグラのサフラン祭り
コンスエグラのサフラン祭りは、10月の最終日曜日におこなわれる。
風車のまわりで、寸劇や踊りが展開するので、やってきたのだ。ローカルを中心に近隣の村から人が集まってきて、寸劇を大笑いして見ている。こういうイベントはバリ島でもインドでも、世界中どこでもあるんだけれど、カリカリに乾燥した空気と風車が舞台というところにラマンチャらしさを感じるイベントかな。
荒野の寸劇。
おや、フラメンコではないかい。
アンダルシアから来たフラメンコの一団と、カスティージャ イ レオンから来た踊りの一団も、フォルクローレを披露してくれた。
日本では、フラメンコの衣装が「スペインの民族衣装」と思われているふしがあるけれど、あれはアンダルシア地方独特のもので、その他の地方の人は着ない。
ラマンチャの服はこんな感じ。
アンダルシアとぜんぜん違うことがよくわかると思う。服だけでなく、音楽も踊りもぜんぜん違う。観客としては、いろんな踊りが見られて、華やかで楽しかったよ。
サフラン祭りのメインイベントは
ラマンチャの特産はサフラン。「サフラン色」といえば鮮やかなオレンジ色のことだけれど、実はサフランの花はきれいな紫色をしている。サフランで大切なのは花びらではなく、雌しべなのだ。雌しべがオレンジ色をしていて高価な香料になる。
雌しべは手作業でないと集められない。繊細な指の動きで、短い時間にたくさんの雌しべを摘む「雌しべとり競争」が数日間にわたるサフラン祭りのメインイベントなのだ。
こういってはなんだが、「雌しべとり競争」はローカルの人には重要なんだろうけれど、ぼくには興味を曳かないメインイベントだ。
どっちかというと、めしべ取り競争の次のプログラムの、踊りのほうが楽しみだ(たぶんローカルの人以外は皆そうだろう)。
そうこうするうちに、今日も一日が終わる。
ラマンチャの風車は、古くは12世紀に使われ始めたという。そして1950年代まで実際に小麦粉を挽いていたそうだ。この風車は、なんと8世紀もの長きにわたって風を受けていたのだね。
そして今日も同じ地平に日が沈む。
この夕陽の景色は、この先ずっと未来になっても変わらないかもしれないなあ。
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