アンダルシアにはためく仏教の旗
アルハンブラ宮殿へ行くには、ヌエバ広場からゴメレス坂を登っていく。
新緑の小道を汗をかきながら登ると、坂の途中には街の名前の由来となったグラナダ(ざくろ)の装飾をいただく門がある。この街をイスラム教徒から奪った記念に建てた門なのだそうだ。
ゴメレス坂の周辺には庶民的な古い館が多い。
そのひとつの窓に、五色の旗がわたされていた。
赤・緑・青・黄・白の五色の旗は、チベットやネパールの街道や家でよくはためいている、仏教の旗である。チベット語でタルチョーといい、チベット文字で経典が書かれていて、風に吹かれるとその経典を読んだのと同じ功徳があるとされている。ぼくには、大変懐かしいというか、自然な景色として認識できる旗である。
ぼくは、ヨーロッパでいろんな人と話をする機会があるが、よく「仏教は平和でいい」と言われる。
その言葉の裏を返すと、一神教は戦乱が多いということらしい。かつてスペインでは、イスラム教徒とカトリック教徒が700年にもわたって戦争を続けてきた。次々とイスラム王国が滅ぼされていくなか、最後のイスラム王国だったグラナダは存亡をかけて外交努力をし、カトリック王国に朝貢し戦があればその旗下で戦列に加わるほど貢献していた。しかし、1492年、ついにカトリック女王イサベルに滅ぼされてしまう。
白く輝くシエラネバダ山脈を背景に建てられたアルハンブラは、イベリア半島最後のイスラム王朝の都だった。
そこへの登り口にはためく五色旗は、今の平和がいつまでも続くことを祈って渡されたものに違いない。
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