NAVERまとめのライターに無断転載の損害賠償を支払っていただいた件

NAVERまとめ対策,著作権侵害対策

昨年、NAVERまとめにぼくの写真が無断転載されているのを発見し、使用料(損害賠償)を支払っていだだくために発信者の連絡先を問い合わせていることは、これまでにブログで何度か書いてきました。

この度、NAVERまとめを運営するLINE株式会社はライターの連絡先を開示しました。さっそく無断転載された写真1点の損害賠償6万円をライターに請求したところ、翌日に支払っていただけました。

NAVERに大切な作品をパクられた方は、この記事を読んだら、削除だけで矛を収めずぜひライターたちに損害賠償をしてください。パクったら即損害賠償の請求書が届くということが知れ渡れば、キュレーションサイトのような悪質なサイトに記事を書く愚者は減ることでしょう。

抗議をしてから、損害賠償が支払われるまで

NAVERに最初の抗議をしてから損害賠償が支払われるまでをまとめます。

2016年10月:NAVERに抗議するもほぼ無視される

昨年10月に、NAVERまとめにぼくの写真が無断転載されているのを発見しました。パクられた写真はこれです。

NAVERまとめに無断転載された写真

さっそくNAVERまとめを運営するLINE株式会社に抗議するとともに発信者情報開示請求をしましたが、同社は「そんなことは知ったことではない」と言わんばかりのそっけない回答をしてきました。

その時のLINEの傍若無人な対応をブログ記事にしたら多くの方の共感をいただけて、40万人以上に読まれました。こちらの記事です。

LINE株式会社がオリジナル作品の作者を小莫迦にする態度があまりにひどく、また声を上げる方が続出したこともあって昨年から今年にかけてネット上で紛糾しました。

2016年12月:LINE社が自らを守るために方向転換

それまで、誰からどんなに抗議されようとも一顧だにしないLINE社でしたが、昨年12月に突然、路線を転換するプレスリリースを発表しました。

自社のあまりの悪評ぶりになんとか対策をしなければ、と考えたようです。ここでLINE社は、無断転載記事を書いたライターの連絡先を被害者に伝えると発表しました。

そうしないと全国に無数にいるパクられた被害者の怒りの矛先がLINE社に向けられ、無断転載の責任が追求されます。すねに傷持つLINE社はそんな事態を避けるためにすべての責任をライターに押しつけることにしたのです。

もともとライターに責任を負わせる規約になっている

「押しつけることにした」と書くと、あたかも昨年末になって決めたかのようですが、実はNAVER利用規約には初めからそう書いてあります。

第5条(当社に対する補償)
利用者は、利用者が法令または本規約に違反して本サービスを利用したことに起因して(かかる趣旨のクレームを第三者より当社が受けた場合を含みます。)、当社が直接的もしくは間接的に何らかの損害、損失または費用負担(弁護士費用の負担を含みます。)を被った場合、当社の請求にしたがって直ちにこれを賠償または補償しなければなりません。

はじめから、無断転載の責任はすべてライターが負う規約になっています。もし裁判になったら損害賠償金や弁護士費用などすべての費用はライターに請求されるのです。NAVERに記事を書いている人はこれをよく覚えておきましょうね。

第7条(当社の責任の免除)
当社は、本サービスに起因して利用者に生じたあらゆる損害について一切の責任を負いません。

2017年2月:LINE社に再び開示請求する

プレスリリースを受けて、ぼくは再びLINE社に情報開示請求をしました。

開示請求書と資料はすでに書留で送ってあるので、今回はメールで「開示してください」と書きました。すぐにNAVERからは「検討しますのでお待ちください」という返事がきました。その後も毎週「検討しますのでお待ちください」というメールがきますが、なかなか実際に開示しません。

そんな調子で1ヶ月以上も放置されたので、しびれを切らして「一体いつまで検討しているのですか。何を検討しているのか具体的に教えてください。さもなくば速やかに開示してください」とメールしました。

すると「開示いたします」という返事がきました。

数日後に開示書が書留で送られてきました。

NAVERまとめからの手紙
NAVERまとめからの開示請求への回答

なお、この開示書とは別の書類でIPアドレスも開示しています

2017年5月:損害賠償6万円の請求書を送る

さっそく、開示されたパクリライターのメールアドレス宛にご挨拶文を送りました。文章はアサヒカメラ2月号の「無断転載対策特集」に掲載された例文を参考に、アレンジしています。なお、個人名は仮名です。

清水さま

昨年10月に、NAVERまとめの貴殿が作成されたページ
(http://urx.blue/E0Ux)に、私が撮影したポルトガル・マデイラ島の写真1点が無断で転載されていたことを発見しました。

私が写真を公表しているブログのページはこちらです。
(https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/342)私はこの写真について貴殿にもLINE株式会社にも使用許諾をしたことがありません。また引用など著作権上の例外にも該当しません。

当該行為は私の著作権および著作人格権を侵害しています。
しかし、私は貴殿とこの件を話し合いにて解決したいと考えています。つきましては5月12日までに以下の私のメールアドレス宛にご連絡をくださいますようお願い申しあげます。

有賀正博

返事は即日きました。

有賀様
この度は、ご迷惑をお掛けしており大変申し訳ございません。

〜中略〜

今回の件につきまして、如何すればよろしいでしょうか。お忙しい中、お手数をお掛けしまして大変申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。

清水さま
早速の返事をありがとうございます。
私はプロのフォトグラファーですので、私の写真をご使用には使用料が発生いたします。使用料は業界最大手のレンタルフォト会社アマナイメージズの料金に準じます。WEB用途の使用料はこちらに掲載されています。(https://goo.gl/TRH5C4)

清水さまがご使用になった写真:マデイラ島の風景1点
写真を掲載した日:2013年11月28日
写真を削除した日:2016年10月18日

ご使用期間は3年間ですので、ご使用料は60480円になります。
さらに無断使用の割増金を原則として2倍を申し受けるところですが、すみやかにお支払いいただけるようでしたら割増金は減免させていただきます。

下記の口座にお振込ください。
期日は5月20日までとさせていただきます。
(お支払いの振込先口座)
 **銀行 **店 普通口座*******
 アリガマサヒロ

文中の「使用料」は法律的には誤用で正しくは「損害賠償」というのですが、あえて軟らかい表現にするために一般的な「使用料」としています。

ここまで手間をかけさせてくれたのですから、パクリライターにはそれなりの落とし前をつけてもらうつもりでした。IPアドレスが判明していれば警察も動きやすいですから、著作権侵害で警察に告訴する気マンマンだったのです。そして割増金2倍は請求するつもりでした。

ですがここで、このパクリライターもLINE株式会社の被害者なのだということを思い出しました。

ユーザーに法律違反を多発させるLINE社のシステム

LINE社が運営するNAVERまとめは、権利侵害を多発させるツールをユーザーに使わせて記事を書かせ、キュレーションサイトと名づけています。その実態はパクリサイトです。

しかも、しかもですよ。運営主体であるLINE社が法律で免責されるようにつくってあるのです。違法行為をするのはツールを使うユーザー(ライター)であってLINE社ではない、という理屈です。

違法行為の元締めが法律によって守られているのです。
すごいですね。この仕組みをつくった人はよほど頭がいいのでしょう。さすがはLINE株式会社です。

法律違反の責任はすべてユーザーが負う仕組み

ぼくの写真を無断転載した清水さんは月間200万PVを誇るまとめライターです。計算するとLINE社からは毎月2〜3万円ほどの報奨金が支払われます。

月間200万PVとはたいへん優秀です。もし清水さんが自分のブログでこの才能を発揮したならアドセンスだけで30万円、そのほかのアフィリエイトで20万円以上、併せて少なくとも50万円を毎月稼ぐことでしょう。その数倍の収益も夢ではありません。しかしLINE社から支払われるのはわずかな金額。差額の45万円以上はLINE社の利益になります。

はした金で清水さんがせっせと書きためたのは違法なコピペコンテンツ。しかもその法的責任はすべて清水さんが負うのです。もしぼくが裁判をおこせば清水さんが法廷にでてこなければなりません。LINE社は知らん顔です。利益のほとんどを巻き上げておきながら。

翌日、損害賠償が支払われる

6万円の請求メールを送ると、翌日には指定口座に振り込まれました。

清水さんの2ヶ月分の売上がとぶことになりました。清水さんが無断転載した写真はそうとうたくさんあるから、被害者みんなから損害賠償請求がきたら赤字でしょう。そもそも無断転載して記事をつくって利益をあげるのは法に触れるのですから、黒字にしていいものでもないですけどね。

NAVERまとめに作品をパクられた方へ

作品をパクられたら、削除だけで矛を収めずに、当記事のようにまとめライターに損害賠償請求をしましょう。

というのもまとめライターは、あなたから画像の削除要請を受けたら、それを別の画像に差し替えるだけでぜんぜん反省なんかしません。だから今後もパクリ記事作成を続けます。ということはですね、次回、誰かに「画像を削除してください」といわれたら、そこに差し替えられるのはあなたの作品かもしれないということです。

削除要請しても相手は「文句をいわれたら別の画像に差し替えればいいや」と思っているだけですからパクリは止まりません。こういった手合いには「作品を利用したら料金を請求される」というあたりまえのことを認識していただくほかありません。

NAVERまとめのライターの方へ

LINE株式会社は、NAVERまとめのサービスにおいて、記事を書くライターを守りません。本来ならLINE社が負うべき無断転載の一切の責任をライターは負わされています。NAVER利用規約に初めからそう書いてあります。

このようなサービスを今後は利用すべきではないでしょう。

また、社会の眼が厳しい現在の状況下にあっても、なおもNAVERのようなパクリで成りたつ意識低い系サイトに記事を書き続けているとしたら、それは違法であることを承知して執筆しているということです。そうなると情状をくむ余地はなくなります。

今後は、無断転載の損害賠償には割増金を加算しますし、あわせて警察に刑事告訴します。著作権侵害は、民事と刑事を併科される犯罪であることを覚えておきましょう。

ライターに責任を負わせる規約は法的に有効なのか

ところで、NAVER利用規約には「ライターが責任を負う」と書いてありますが、果たしてこの規約は法的に有効なのでしょうか。

このほどの改正民法で、よく約款に書いてある「事業者は契約において損害賠償責任を一切負わない」の一文は、消費者に一方的に不利な条項なので無効とされることが決まりました。施行は2020年ごろからの予定ですが、今後の法の運用はこの考え方に沿っていくので、NAVERの規約は無効とされることが期待できます。

ですから今後は、違法な無断転載の責任をユーザーに押しつけるLINE株式会社のやり口は通用しなくなり、LINE社に責任をとっていただくことも可能だと考えています。

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