ガジュマルの樹の下で聴いたのは、ただ一人だけ生き残った女性の唄
樹齢300年になろうというガジュマルの樹。
ガジュマルの樹は、ひとつの樹から無数の幹が分かれて森のような姿になる。生命力の不思議を感じてご神木として祀られている大木を東南アジアでよくみる。
写真のガジュマルの樹は、石垣島の白保にある、やちむん館の敷地に生えている。やちむんとは沖縄の言葉で焼き物のことで、ここでは焼き物をはじめ手作りの品を製作販売している
この週末は石垣島でも竹富島でも祭りがあるのだが、やちむん館では国内各地から集まった出品者が丹精込めた品を並べていた。
ガジュマルの樹に響く三線の音
そしてガジュマルの樹の下では沖縄民謡の演奏がおこなわれた。
120年前に島でマラリアが流行ったとき、かつてこの地にあった盛山村は住民がひとりを残して全員が死んでしまったという。ただひとり生き残った女性の境涯を表した曲が毎年この時期に唄われるのだそうだ。
八重山言葉の歌詞は聞いてもよくわからないのだが解説によれば「なぜわたしだけ生き残ったのさー」「でも頑張って生きるさー」と唄っている。
盛山村の御嶽(うたき)がこのあたりにあったため祭りの時にこの曲が歌われるときは宮司が立ちあうこともあるそうだ。御嶽とは琉球の祭祀の場所のこと。神さまが降りてくる空間なので、内地の神社やバリ島のプラと似ている。
全滅した盛山村は廃村となり、跡形もない。そのよすがはこの唄にだけ残っている。木漏れ日がまぶしいガジュマルの樹の下で、軽快な三線の音を聞きながらぼくはしんみりとして生き残った女性のこころのうちを想った。
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