リモワ・サルサ 「安心の正規品」は二度と買わない。次は並行品を買う

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ウズベキスタンから帰国して、成田空港のターンテーブルでスーツケースを受けとったら、取っ手が壊れていた。

アシアナ航空会社のカウンターに行って事故報告をしたら、係の女性が申し訳なさそうに取っ手は保障対象外だと説明して、事故証明を発行してくれただけで話は終わってしまった。

今使っているスーツケースは、リモワのサルサ。ポリカーボネイト製の軽量スーツケースとして人気が高く、82リットル(長辺75cm)というサイズながら重量わずか3.5kgしかない。このくらいの大きさだと、一般的なスーツケースなら6kg前後か。同じリモワのジュラルミンケースも6.2kgだから、サルサがいかに軽いかが分かる。

もともとリモワはジュラルミンのスーツケースが有名で、ゼロハリバートンと並んでフォトグラファーなら一つくらいは持っているアイテムだった。確かに美しいジュラルミンのスーツケースは見ているだけでうっとりするしぼくもほしい。

しかし実際にはスーツケースの中に入れるのはTシャツとか靴下とかそんなものばかり。機材はカメラバッグに詰めて機内持ち込みするからスーツケースにはほとんど日用品しか入っていない。実用性を考えればスーツケースがジュラルミン製である必要はまったくない。

リモワが軽量スーツケースとして初代サルサを発表したのは21世紀が目前に迫る西暦2000年。しかし初代サルサは今あるものと素材が違って外観がやぼったくて、軽量ではあったが本体構造の完成度がイマイチという評判だった。

改良されたサルサが新発売

その後、改良されデザインも素材も現在のものとほぼ同じになったサルサ2代目が発表されたのが2003年。ぼくはこれを待っていた。さっそく、新宿ヨドバシカメラの裏に当時あったセレクションという屋号の鞄専門店へ行って、入念に各所をチェックした上で購入した。

カメラもそうだが、事前にあれこれ仕様を検討するのが買い物の楽しみの一つである。このセレクションは親切でよい店だった。現在は東京郊外に移転してネット販売に力をいれている。

ジュラルミンのスーツケースが高価なこともあって、リモワは並行輸入品が多く市場に出回っている。しかし、ぼくは「安心の正規輸入品」という謳い文句を信じて、林五(日本代理店の名称)による正規輸入品を買うことにしていた。本来リモワは購入後五年間のワールドワイド保障があるのだが、日本で販売されるものはなぜか1年の保障しかなかった(当時)。

それでもぼくは正規輸入品のサルサを購入した。

使い勝手と軽さとを両立させた2代目サルサは、充分満足できるものだった。ぼくが軽々とスーツケースを持ち歩いているのを見て、自分もサルサを購入したライターさんや編集者さんは片手で数えるより多いから、多少なりともリモワの宣伝に貢献したといえよう。

酷使の末に壊れる

そのサルサも、3年ほど経つとボディ裏面がひび割れてきた。ぼくは毎月のように2〜3週間海外へ行っているから、耐久性は充分だろう。ひび割れに黒ガムテープを貼ってしばらく凌いだが、裂け目がだんだん大きくなる。2007年の年頭には、とうとう角の部分がざっくりと割れてしまった。その時は修理費用をエールフランスが負担してくださるとのことなので、さっそく安心の正規代理店、林五に修理を頼んだ。

しばらくして返送されてきた修理完成品は、ワレた部分にこんもりと補修材が盛ってあるのが一目で分かる、いかにも修理しましたという感じだった。しかし角っこという場所柄、強度を出すためには必要な措置なのだろうと納得した。なにしろ正規代理店による修理なのだから、これが最高最善なのである。

しかしその3週間後に次の海外取材に出かけたら、同じところがまた大きく割れてしまった。そこで林五に電話して、無料での再修理を依頼した。

ぼくの仕事道具である一眼レフカメラも、ときどき何らかの不具合がおきる。機械なのだから使っていれば調子が悪くなるのは当たり前だ。そしてニコンなら、修理したのと同じ部分が6ヶ月以内に壊れたら無料で修理してくれる。カメラメーカーはどこでもそうだ。ソニーやパナソニックなどの家電会社も再修理保証をしている。

実際に、修理があがってしばらくしてから不具合が再発し、再修理に出したことは何度もある。

だからぼくは、技術を売り物にする会社ならば、修理した箇所がすぐに壊れたら自らの責任感がそれを許さない、必ず無料で完璧に修理します、という感覚でいるのが当たり前だと思っていた。それでこそこちらも信頼して製品を使用できるというものだ。

期待外れの国内保証

ところが林五の電話の応対はぼくの期待とはぜんぜん違った。「製品の修理には何の保証もしていない」というのだ。だから「また料金がかかります」とのこと。

まあそういうスタンスなら仕方がない。しかし、そういう会社がクラフトマンシップを売りにするのはいかがなものであろう。質が高いのはドイツの職人であって日本の職人ではないということだろうか。もともとリモワにはワールドワイド5年保証がついているのに、日本に限って国内のみの1年保証しかついていないのは、そういう理由だったのかい。

日本人としてこの回答には少々不満を感じたぼくは「それでは、安心の正規輸入品とのことですが、お客にとっていったい何が安心できる材料なのでしょうか」と率直に聞いた。

電話の向こうの人はそれに答えず「修理料金は海外旅行保険でカバーされるから、お客さまには不利益はありません、それでよろしいのじゃないでしょうか」ということで話をまとめようとしていた。「皆さんそうされていますよ」と付け加えて。

「皆さんそうされていますよ」か。

もしそうなら、短期間に何度も修理代金を保険会社に請求することに違和感を感じるぼくの方がヘンな人ということになってしまうではないか。

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次は並行輸入品を買うことに決めた

林五とのかみ合わない会話をそれ以上しても無駄なのでぼくは電話を切った。ぼくが訊いたのは、クラフトマンシップを売り物にするリモワが修理のクオリティをどれだけ責任感を持ってやっているのかということだったのだが、電話の相手の日本総代理店はそういうことには関心がないようだった。

保険会社がお金を払ってくれるんだからそれでいいでしょう? という姿勢でいるなら、林五の製品保証期間がわずか1年間しかないのも理解できる。もし保証を世界共通の5年間にしたら、収益の機会を逃してしまうではないか。林五の経営方針は、海外旅行保険の仕組みを最大限利用して利益をあげることであって、クラフトマンシップの信用を守ることは無関心なのだった。

ということに気づいてしまったぼくは、壊れたサルサを修理しないことにした。
そして今後は、林五を通した製品を買わないことに決めた。

他に代替となる製品はないから、新しいサルサを買わなければならない。林五の商売のやり方が分かった今となってはこの会社を通した製品は価格が高いだけで何の安心材料もないことがハッキリとしたので、次は安価な並行輸入品を買うことにした。

つづく

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Posted by ariga masahiro