機材の色温度をすべて5000kに揃えよう。写真の色が正確にわかる
仕事部屋の照明が整ったら、次はモニタの色を調整だ。これは簡単なようでいて結構難しい。MacならOSについているディスプレイキャリブレーターアシスタントを使えばある程度調整でるけれど、目でみながら調整をするのはあんまり正確じゃない。
というのも、目視調整は色の変化を見ているうちに目が慣れてしまい、変化が分からなくなってしまうから。人間の目のオートホワイトバランスの性能の高さはすばらしいが、キャリブレーション作業をするには柔軟すぎて向かないかもしれない。
そこでエックスライト社の Colormunki というツールを使えば手軽にモニタの発色や色温度を調整できる。
USBケーブルでパソコンと繋いで使う。
周辺の明るさも計ることができる。
たまにしかこれを使わないから、実は操作方法を毎回すっかり忘れているんだけど、さすがはアメリカ製だけあって画面の案内が分かりやすいから躊躇なく作業できる。
アメリカ合衆国は多民族社会でそれぞれ常識が違うし、教育も教養も格差が激しい。英語が分からない市民がたくさんいるし文盲率も高い。そんな国だけあって工業品はどんな抜け作でも操作を間違えないように合理的に作られている(だからぼくにも簡単に操作できる)。日本の家電も見習ってほしいもんだ。
周辺光を計ったら、こんどはモニタの発色を調べる。
三原色であるRGB(赤緑青)がちゃんと発色しているかを確認している。
長期間使ったモニタは発色が変化することは、誰でも経験的に知っていると思う。テレビもそうだしね。
色が偏ったモニタで写真データを見ても、その写真の本当の力は分からない。女性の肌のような微妙なトーンは、正しく発色するモニタでなければ再現できない。キャリブレーションツールはフォトグラファー必携であろう。
何より操作が簡単で、手間がかからない。
Mac OSのディスプレイキャリブレーターアシスタントで調整するより早く終わるんじゃないかな。何より正確さという点では比較にならない。価格が4〜5万円するがその価値はある。これなしで写真を見ても色が判断できないのだからフォトグラファーにはカメラと並んで必需品だろう。
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色には温度がある
RGBの調整が終わったら、最後にモニタの色温度を選ぶ。
色温度とは光の色を表す数値のこと。「温度」といっても寒暖のあらわす数値とは別だ。例えば日中に涼しげに見えた風景が、夕陽を浴びるとオレンジ色に見えることは皆知っていると思う。これは時間帯によって光の色が違うからで「色温度が変わった」という言い方をする。熱の温度は摂氏ならcで表すが、色の温度はk(ケルビン)で示される。
色温度が低いと赤く見えるし、高いと青く見える。
夕方の太陽光は色温度が低いのだった。
フィルム時代は、カラーフィルムは5500kに設定されて製造されていた。日中屋外の色温度が5000k〜6000kぐらいだから、ちょうどいいバランスに写るのが5500kなのだった。商品撮影のように正確な色再現が求められる撮影ではフィルムに合わせてストロボも5500kに揃えることが重要だった。
もっともスナップ撮影は「その場の光」を生かして撮る作風だから色温度が何度でも構わない。
デジタル時代の現在では、カメラ・ストロボ・モニタは全て5000kに揃えるのが基本。カメラの色温度を5000kに設定するのはフィルムとデジタルでは色の拾い方が異なるからでもある。ぼくは、日中屋外の撮影では色温度をマニュアルで5000kに基本に 設定してる。オートホワイトバランスは屋内のミックス光源下でたまに設定することがある程度で、普段はまずそこにセットしない。
モニタの色温度は5000kに設定する
モニタの色温度設定の基準を「白色点」という言い方もするが、たいがいのモニタで設定できるのは次の3つの数値。Colormunki でも同じだ。
- 5000k
- 5500k
- 6500k
大概のプロ用液晶モニタは工場出荷時に6500kに設定されている。これはsRGBの規格がそうなっているためだ。写真撮影に無関係なオフィスの人はモニタを6500kに設定するといいだろう。
それから安物のモニタは工場出荷時に9300kというやたらと青く見える値に調整されているが、これは日本のテレビ放送の規格の流れを組んでいるため。テレビ番組がやけに青く見えるのは色温度が高いせいだ。
普段テレビをみる時間が多い人はテレビの9500kという青い画面を見慣れているため、正常な色調を物足りなく感じるという逆転現象が起きている。困ったことだ。
さて、3つの色温度のどれを選んだらいいかというとだね、
- 紙媒体で仕事をしているプロなら5000k。
- ギャラリー向けのプリントをするなら5000k。
- ウェブのみ、パソコンやモニタなどデジタルだけで完結するなら6500k。
- どっちにも配慮するなら5500k。
という感じ。自分の環境によって決めよう。
プロなら全てのデバイスの色温度を5000kに揃えよう
ぼくは、カメラのWBを「昼光」、仕事場の色評価用蛍光灯は5000k、そして仕事場のモニタの色温度も5000kに設定している。
昼光はだいたい5500kくらいか。
ところで、モニタの色温度は5000kがいいと言われて設定したら、画面が黄色く不自然に見えるという話をチラホラと聞く。それは、それまで6500kの青い画面を見ていたのだから、そ青さに目が慣れてしまっているからだ。その上、モニタと環境光(天井の蛍光灯)の色温度が揃っていないのだから不自然に見えて当たり前。うちの5000kに設定したモニタは白がちゃんと白く見えるよ。上品なワームホワイトという感じで、上質な紙に印刷された写真を見ている感覚かな。やっぱり5000kが印刷学会標準値に設定されているだけのことはある。
果たして結果は
ナナオL997の標準ICCプロファイル(色温度6500k・ガンマ2.2)
Colormunkiで作成したL997用プロファイル(色温度5000k・ガンマ2.2)
室内の照明を消してモニタ画面をカメラで撮影した。パナソニック GX7、色温度5000k。GX7はカラーチェッカーパスポートを使って色の片寄りを防いでいる。
やっぱりColormunkiが作成したプロファイルは自然な風景に見えるね。空の青もきれい。雲も白くてきれい。対して純正プロファイルの空の青さはベタついてるし色がやや濁っている。写真の下地のグレイがColormunkiの方がちゃんとグレイにみえて色の片寄りがないことがこの小さな写真でもわかると思う。
これは純正ファイルの出来が悪いのではなく、すでにモニタを約7000時間使っているため液晶パネルの発色が変化しているからだ。これを更生するためにキャリブレーションツールの存在理由がある。
もう一点、桂林の写真はいかに
ナナオL997の標準ICCプロファイル(色温度6500k・ガンマ2.2)
Colormunkiで作成したL997用プロファイル(色温度5000k・ガンマ2.2)
こちらもColormunkiのプロファイルを使った方が色が自然に見える。
が、自然に見えるからいいかというとそうでもない。水墨画のような世界が感じられて写真として雰囲気があるのは上の方だ。なんと色が偏ったモニタの方が、写真がよく見えることもあるのだね。結果的にブルーフィルターをかけて撮影したようなものか。
しかし、勘違いしてはいけないのは、あくまでも下の方が正確なデータの色だということ。水墨画のようなしっとりしたイメージの写真にしたいなら、正確な色をベースにして写真ソフトでフィルター効果などの後作業をすべきだ。そうでないと、いい写真だと勘違いしてプリントしてもぜんぜん色が合わず、プリンタに問題があるのかと疑ってみたり、かなり難儀することだろう。
Colormukiなどのキャリブレーションツールを買うのは予算的にキツイという人は、Macならメニュー→システム環境設定→ディスプレイ→カラー→補正 でディスプレイキャリブレーターアシスタントが使えるからこれをつかって調整しよう。何もしないよりずっとマシだと思う。その点、EIZOのモニタは付属するプロファイルがよくできているから目視調整がしやすい。その他のメーカーは、液晶パネルもICCプロファイルもクオリティもそれなりなものがあるから時間をかけてじっくりと取り組んで下さい。
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